大会二日目
第3ステージ183キロ 名寄→オロロンライン→豊富
27キロと104キロ地点に峠。そして125キロ地点から始まる恐怖のオロロンラインが正念場。強烈な西からの横風が大敵。
今日はまぁ逃げなどもあって二つの上りをしっかり集団内でこなしつつ補給地点での食料受け取りもばっちりできて余裕をもって125キロ地点に近づいていった。集団は気持ち悪いくらいゆっくり。そのときに備えるべく位置取り合戦が始まり自分もごちゃごちゃと動いて集団の中盤くらいにいるころに運命の右カーブを迎える。
その瞬間、左からの横風により集団は右側反対車線の路側帯に一列棒状べた付き状態に。横から風のため集団の恩恵は皆無で、右側で350Wで踏んでいるうちは状況は一向に改善しない。えいっと左に出るもののさらに400W以上維持して前に出ることもできず宙ぶらりんのまま苦しむ。選手は皆防風を求めて集団はとても不安定。そんな中、すぐ前方で落車発生!
あっ左にハンドルを切って回避を図るが、次の瞬間無重力状態を体験。ボーンという音とともに地面にダイブ。むくりと上体を持ち上げるが地面がぐるぐると回っている。数秒後に正気を取り戻して立ち上がってバイクのチェック。チェーンが外れていたので手で直しつつ自分の傷を確認。痛みが感じられるのは主に肩でジャージの肩が破れて擦過傷だけで大丈夫そう。乗ってみると自転車も特に不自由はなし。やれやれふらふらと走り出す。前に西薗が止まっていてなにやらパンクパンク、前輪とか言ってチームカーかニュートラルカーを待っている。インカレならまぁ自分の前輪をあげてもいいがここは北海道、かまわず前へ。
あまりに風が強く少数ではとても追えない。ここは単独で焦って進んではいけないと自分に言い聞かせて後ろを確認しながら無理せず踏む。ひとつ気になったのは妙に頭がスースーすること。落車で頭を打ったのでなんか変になったかな。何度も自分で頭をなでてみるが赤いものは見えないのでたぶん大丈夫だろう。レース後、メットの後頭部が粉砕していて風が入っていたことがわかった。
(※以下はいろいろあってすでに審判に周知の事実となっているので書いちゃいます)
やがて列車がやってくる。5人くらい。なんと三谷&東もいた。まぁのこり50キロみんなで回していけば大丈夫よーってことで回すがあまりに遅いので待ちながら進む。何度か回すうちに西薗が一人ですーっと抜いていった。そうこうするうち何台か車が来たので申し訳ないが踏める人だけでカーペーサー狙いでダッシュ。付けたがペースが早くてやがて付き切れ、を繰り返し結局少数になってしまう。後ろを見ながら走るが来る車がことごとくカーペーサーにすでに使われており速度差がありすぎて付けない。そのうち三谷が付いている車にも抜かれる。おいこら~~~。そのうちカーペーサーにうまく乗れたがいかんせん400W近く出さないと切れそうになるペースでどうしようもなくまた切れる。続いて隊列の中の救急車が登場して付かせてもらい、これは背が高く優秀で4分くらい引いてもらいめちゃくちゃいい感じだったがその後一気に加速していなくなる。なんだよ~~。またまたばらばらになる。近くにいた法政としばらく二人で回したが彼は瞬間のダッシュでカーペーサーに乗っていき取り残される。くそ~~~。
さらに後続車がきたがまた便乗失敗、しかしすぐ後ろのバイクが引っぱってくれる感じで寄ってきた。しかしペースが速くて付き切れ。待てー待ってくれーと絶叫して命乞いをするが去る。
この地獄ではどうやら救われる人間と救われない人間の二種類に大別されるようだ。
やはり自分の現世での生き方に問題があったのだろうか。
その後、後続からきたチームカーを発見。しかしそのうしろにはすでに4人ぶらさがっていた。左側の後ろの窓をゲット!神が降臨した。軽く回しながらバランスを保ち文字通り引っ張ってもらう。左からの強烈な風に何度もバランスを崩しかけるがこの窓は本当に、死ぬかあるいは手を離すかといった具合の命綱であり死ぬ気でしがみついた。
軽くペダルを回しながら捕まるのがコツというような話を思い出し、こぐ。しかしスピードが上がっていくと回す脚が間に合わない。しかも右手で窓枠を持っているので変速ができない。変速できませーんと訴えて車の中からレバーを動かしてギアを変えてもらった。経験豊富な柿木さんに車中からギアチェンジという初体験を提供。
しばらくして別府選手が左側の窓に捕まりに現れて結局車の窓の左右に二人ずつ捕まり後ろに二人カーペーサー状態というすさまじい絵ができあがった。バランスを保つので必死で右肩と右手は攣りそうだし腰も痛みを増す。前の別府選手の捕まり方をお手本にして、脚を回すのをやめて右脚を車体に付けて右手と併せて二点接触を図る。そういえばさっき落車して右半身にひととおり傷があるがおかまいなしに傷口も車体に押し付ける。ペースが上がり時速47くらいでしばらく引っぱり続けてもらった。これはこれは長い時間に感じられた。このまま耐えればゴールにたどり着けるので絶対に離すわけにはいかないと死ぬ気で捕まる。
あとでデータを見ると捕まっていたのはたったの7分間だったらしい。しかしとてつもなく長かった。7分後、審判車が現れて車から離れるよう指示。離れたもののここでまさかの、まさかの赤旗をふられた。は!?うそでしょ。ありえん。。審判車に向かって殺気を覚えた。
ふと目をそらすと晴れた北の海に浮かぶ利尻富士がきれいだった。これはいわゆる絶景というやつではないか。
4時間20分、158キロ、平均164W