CPより高いパワーで走るとき、W'はCPより上の仕事量分減っていく。
CPより低いパワーで走るとき、W'は回復すると考える(確かに足は回復する)。
回復速度について
文献1のappendixより。
仮定1より低いパワー(P)で走っているときには早く回復する。
→回復速度はCP-Pに比例する。
仮定2W'が減っているときほど早く回復する。
→回復速度はW'の消費率1-W'(t)/W'0に比例する。W'(t)は時刻tの残量(=W'bal)、W'0は初期(さら足)の残量
次数1の化学反応と仮定している。原理的には高強度でクレアチンリン酸濃度が減り、低強度で糖や脂肪由来のエネルギーで濃度が回復する反応に関係していそうだがとても複雑。
オールアウト近くまでいくと回復は遅そうだがそこは無視!
2つの仮定より回復速度はCP-PとW'消費率の積とする。
W'(t)について解くと、消費したW'は時定数W'0/(CP-P)で指数関数的に回復する。
例えば、W'0=20kJ, CP-P=200W(ほぼ負荷なし)とすると時定数は100秒
100秒経つとW'消費量の約2/3は回復する。
時定数の3倍経つと95%も回復するので事実上可逆。糖のストックが減ることは考えない。
回復速度はCPとW'0だけで決まらず人によって違いそうなので回復の時定数(τ)を調べた(
文献2)。
まず3分オールアウトテストでCPとW'を求める。
その後インターバルのオンとオフを続けれなくなるまで繰り返して、終了時点でW'balがゼロになるようにτを決める。
負荷を変えてテストしてτとCP-P(Pは回復時のパワー)の関係の回帰式を作った。τはCP-Pが大きいほど小さく、300~700秒くらい。
あるレースデータについて、CP以下で走行した時間帯の平均パワーPでのCP-Pから求めたτで計算したらちょうどW'balがゼロ付近で千切れた。予測に使えそう。
この回帰式とCP-Pの求め方は
GoldenCheetahや
ガーミンに使われていて業界標準のようになっている。
被験者は7人のホビーレーサーでnot highly trainedな26±5才で、81±6kgとわりと巨体であった。
highly trainedな人は回帰式より時定数が小さく回復が速いので個別にτを求めるテストをすることが推奨されている。
別の方法でもτの妥当性を検証した(
文献3)。
インターバルでW'を50%くらい消費した後で、続けられなくなるまでCP以上で一定走。終了時点のW'balはゼロ以下になり予測より回復は速かった。60s-30sより20-10sの方が回復が速かった。高強度の後に回復してテストすると
CPが上がる報告もあり、ウォーミングアップのような効果が出てくるのかもしれない。
まとめ
CPとW'とτで戦闘力をモデル化しようとしている。なかなか合わせ込むのは難しそうだが、時系列のグラフにすると乱れたパワーのデータからは読み取りにくい”きつさ”の時間変化を見やすくできるので参考にはなる。他にはインターバルのレスト時間の設定にも使える。