Attentional focus and motor learning: a review of 15 years
概要
お題:運動する時にどこに意識を向けるとよいか。
自分の体の動き(内部)を意識するか、使う道具の位置や周囲との関係(外部)を意識するか。
⇨大半の実験で、外部を意識した場合の方が良い結果が出ている。
個別の試行だけでなく、動作を学習して身につく速さも速くなるとのこと。
背景
著者自身がサーファーで、ボード上の足の置き場とか手の位置とかに気をつけた場合よりも、ボードの傾きを意識した場合にうまくいくという経験があって、この研究を始めた。
バランス
不安定な板の上でのバランステストで、板が水平になるよう意識するよう指示されたグループ(外部意識)は、足が水平になるよう意識するよう指示されたグループ(内部意識)より、成績が良かった。目線は、両者とも前を見るよう指示された。
正確さ
ゴルフボールを打つテストで、クラブのスイングやクラブの打面を意識するよう指示されたグループは、腕や手首の位置を意識するよう指示されたグループより成績が良かった。
ボール投げ、ダーツ、フリスビー、ボール蹴りでも同様の結果が報告されている。
効率
肘を支点に重りを腕で持ち上げるテストで、重りに意識を向けたグループは、腕に意識を向けたグループよりも、主動筋と拮抗筋ともに筋肉の活動レベル(EMG)が低かった。
ダーツの正確さのテストでは、同様の比較で、外部意識のグループは、内部意識のグループより正確であったことに加えて、EMGも低かった。
最大筋力
腕力を図るテストで、外部意識のグループは、内部意識のグループよりも有意に大きな最大トルクを発揮した。
スピード
脳卒中からリハビリ中の人を対象とした、ある範囲を動くテストで、外部意識のグループは、内部意識のグループより速く移動できた。
持久力
トレッドミルでの10分のランニングテストで、外部意識のグループ(外を走っている映像を見せた!)は、内部意識のグループ(フォームや呼吸を意識)よりも酸素消費量が少なかった。
全体的な動き
最近の運動分析技術の発達により、全身運動の軌跡を測ると、外部意識のグループの方が、動きの自由度が大きく全体としてスムーズに動けることがわかってきている。体の特定部位を意識すると、その部位の動きの自由度が小さくなって効率が低下する傾向があるようである。
全体的な動きの修正のことは"functional variability"と呼ばれる。
ダーツの例で、矢の発射角度のブレと発射速度のブレから物理的に予測される的からのブレに比べて、実際のブレは小さいらしい。角度と速度を組合せてうまく補償していると考えられる。
メカニズム
認識と動きを両方司るような脳の領域があるとの説がある。外部を意識することで、より無意識の領域(自動的で応答が速く柔軟)が支配的となり、良い結果を生むのではないかと考えられる。
反例
初心者では、外部意識の優位性はないとの報告がある。意識の向けかたよりも個人的な運動経験などの影響が大きい可能性がある。
体操では、外部意識の優位性はないとの報告がある。動きと得点システムが複雑なことが理由に挙げられる。
自由度の高い動きと低い動きで意識付けの効果が異なる理由は不明である。
意識付けの指示はとても繊細なので、筆者の実験では、ほんの1、2単語だけ指示を変えている(例:'focus on the swing of the club' vs 'focus on the swing of your arm')。実験の仕方に注意が必要。
知見
現状では、ナショナルレベルの陸上選手の調査で、8割の選手が腕や足の動きをコーチに指導され、7割の選手が競技中に内部に意識を向けていると答えている。改善の余地があると考えられる。
今後
メカニズムを調べること。fMRIで調べて、意識の向け方での脳の活動領域の違いが報告され始めている。
感想
あまり難しいことは考えずに、意識としてはフォームを乱さず安定して速く前に進もうといった程度で良いのかもしれない。
登りで前を引いてもらうと良いのは、空気抵抗を減らすことよりも、前走者に外部意識を向けられることに意味がありそうだ。
概要
お題:運動する時にどこに意識を向けるとよいか。
自分の体の動き(内部)を意識するか、使う道具の位置や周囲との関係(外部)を意識するか。
⇨大半の実験で、外部を意識した場合の方が良い結果が出ている。
個別の試行だけでなく、動作を学習して身につく速さも速くなるとのこと。
背景
著者自身がサーファーで、ボード上の足の置き場とか手の位置とかに気をつけた場合よりも、ボードの傾きを意識した場合にうまくいくという経験があって、この研究を始めた。
バランス
不安定な板の上でのバランステストで、板が水平になるよう意識するよう指示されたグループ(外部意識)は、足が水平になるよう意識するよう指示されたグループ(内部意識)より、成績が良かった。目線は、両者とも前を見るよう指示された。
正確さ
ゴルフボールを打つテストで、クラブのスイングやクラブの打面を意識するよう指示されたグループは、腕や手首の位置を意識するよう指示されたグループより成績が良かった。
ボール投げ、ダーツ、フリスビー、ボール蹴りでも同様の結果が報告されている。
効率
肘を支点に重りを腕で持ち上げるテストで、重りに意識を向けたグループは、腕に意識を向けたグループよりも、主動筋と拮抗筋ともに筋肉の活動レベル(EMG)が低かった。
ダーツの正確さのテストでは、同様の比較で、外部意識のグループは、内部意識のグループより正確であったことに加えて、EMGも低かった。
最大筋力
腕力を図るテストで、外部意識のグループは、内部意識のグループよりも有意に大きな最大トルクを発揮した。
スピード
脳卒中からリハビリ中の人を対象とした、ある範囲を動くテストで、外部意識のグループは、内部意識のグループより速く移動できた。
持久力
トレッドミルでの10分のランニングテストで、外部意識のグループ(外を走っている映像を見せた!)は、内部意識のグループ(フォームや呼吸を意識)よりも酸素消費量が少なかった。
全体的な動き
最近の運動分析技術の発達により、全身運動の軌跡を測ると、外部意識のグループの方が、動きの自由度が大きく全体としてスムーズに動けることがわかってきている。体の特定部位を意識すると、その部位の動きの自由度が小さくなって効率が低下する傾向があるようである。
全体的な動きの修正のことは"functional variability"と呼ばれる。
ダーツの例で、矢の発射角度のブレと発射速度のブレから物理的に予測される的からのブレに比べて、実際のブレは小さいらしい。角度と速度を組合せてうまく補償していると考えられる。
メカニズム
認識と動きを両方司るような脳の領域があるとの説がある。外部を意識することで、より無意識の領域(自動的で応答が速く柔軟)が支配的となり、良い結果を生むのではないかと考えられる。
反例
初心者では、外部意識の優位性はないとの報告がある。意識の向けかたよりも個人的な運動経験などの影響が大きい可能性がある。
体操では、外部意識の優位性はないとの報告がある。動きと得点システムが複雑なことが理由に挙げられる。
自由度の高い動きと低い動きで意識付けの効果が異なる理由は不明である。
意識付けの指示はとても繊細なので、筆者の実験では、ほんの1、2単語だけ指示を変えている(例:'focus on the swing of the club' vs 'focus on the swing of your arm')。実験の仕方に注意が必要。
知見
現状では、ナショナルレベルの陸上選手の調査で、8割の選手が腕や足の動きをコーチに指導され、7割の選手が競技中に内部に意識を向けていると答えている。改善の余地があると考えられる。
今後
メカニズムを調べること。fMRIで調べて、意識の向け方での脳の活動領域の違いが報告され始めている。
感想
あまり難しいことは考えずに、意識としてはフォームを乱さず安定して速く前に進もうといった程度で良いのかもしれない。
登りで前を引いてもらうと良いのは、空気抵抗を減らすことよりも、前走者に外部意識を向けられることに意味がありそうだ。
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