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Contact Mechanics and Friction

なぜか教科書のpdfを著者が公開していて無料で読めてありがたい。
P261から転がり抵抗の記載あり。
P231から前準備の説明あり。

タイヤは地面から摩擦力を受けるようなイメージがあるが、
タイヤは地面に対して滑ってはいないので摩擦は生じない。
タイヤの非弾性変形によるエネルギー損失を転がり速度で割ることで
転がり”抵抗力”が求まる。
ここで、抵抗力と垂直抗力の比から仮想的な”摩擦係数”を求められる。

タイヤが地面に押し付けられるとき、
その間は、一つのバネ(反力が変位に比例)と、
バネとダンパー(反力が変位の速さに比例)の直列要素たくさんを
並列にしたモデルで近似できる。(図15.15)
押すときの反力に対して戻るときの反力が小さくなり、
差分がエネルギー損失になる。

タイヤを押し付けた時(変位をステップ入力)の反力の時間変化を計測すると、
各要素のバネ定数とダンパー定数をフィッティングで求められる。
それらの重みづけは緩和時間が大きい要素ほど小さくなる。
(十分時間が経てばある反力に落ち着くので)

ダンパーの反力は変位の速さ(周波数)により変わるので、
各要素の反力が周波数により変わる。
低い周波数では減衰が小さく、高い周波数では減衰が大きい。

一般的なタイヤのゴムの特性で計算すると(式15.50)、
(図15.17)の関係になる。
ここで、log(G')はバネの強さ(剛性率の実部)、
log(G")はダンパーの強さ(剛性率の虚部)。

転がり抵抗は、体重の加重による変形の周波数で決まり、
代表変位(地面との接触部の長さ)は10mmオーダーで、低周波数の領域。

一方、グリップ(強いダンパーにより実現される)は、
路面の細かい凹凸による変形の周波数で決まり、
変位の代表長さは0.1mmオーダーで高周波数の領域。
 
→転がり抵抗とグリップを決める周波数帯が異なるので、
 ゴムの特性を調整すれば転がり抵抗低減とグリップ向上の両立は可能

ゴムの特性には温度依存性がある。

転がり抵抗は、低周波数の部分に着目して近似して求めると、
緩和時間に比例し、タイヤ径に反比例する。
緩和時間の小さい(粘性が小さく、硬い)ゴムを使うと抵抗を減らせる。

コンチネンタルのHPによると、
グリップ、転がり抵抗、耐久性の3点が相反する要求であり、
グリップを良くするコンパウンドを使うことで、
転がり抵抗が小さい(グリップは弱い)ゴム特性を選定できる。

転がり抵抗もグリップも良くするゴム特性を得るのはなかなか難しいと思われる。
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2021.06.26 Sat l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
0℃の氷を体温の36℃まで上げるときの消費カロリーを考える。

1gの氷の融解熱は8cal/g
1gの水を1℃上げる熱量は1cal/g
36℃で36cal/g
合わせて44cal/g


よって100gの氷(アイス一個を想定)を食べたら4.4kcal使う。
あまり大きくはない。
2021.06.23 Wed l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
Simplified deceleration method for assessment of resistive forces in cycling

概要
・質点モデルのCrr(転がり抵抗係数)とCdAとを実験で求める方法
・転がり抵抗力は小さいのでCrrの誤差は大きくなりがちだった。
・coasting deceleration methodでは、
 ある計測区間の距離を決めて、
 初速と踏まずに設定した距離を進む時間を測り、
 CdAとCrrを求める

評価方法
 ・タイヤが通過した時刻を測るタイミングスイッチを路面に設置×3か所
 ・スイッチ間の距離は1mと20m
  1,2点目の時刻を測り、初速を求める
  2,3点目の時刻を測り、2,3点目間の距離を求める
 ・CdAとCrrを決めると2,3点目の間の通過時間で進む距離が求まる
 ・初速とおもりの重さを変えて繰り返す
 ・設定距離に一致するCdAとCrrをフィッティングで求める
 ・CdAとCrrは速度によらず一定と仮定
 ・路面はlinoleum flooring(smooth,soft,nonwaxed)
 ・タイミングスイッチの計測精度は30μs

工夫
 ・トルクをかけずにダミーペダリングをする
  →実走時のCdAに近づける
 ・姿勢維持のためハンドルバーに粘着テープ
 ・誤差因子は勾配、風、温度 
  →水平で風がなく温度一定の屋内hallwayで計測

条件
 ・ふつうのロード装備
 ・初速2.5-12.8m/s(9-46km/h)
  再現性評価 4test×各30回(一部のデータを使用)
  感度評価 姿勢3ケース、おもり0-15kgで4ケース

結果
 ・test間に差なし→再現性あり
  CdA 0.333±0.007(SD)
  Crr 0.00563±0.0001(SD)
 ・頭位置変えるとCdAに差あり
  おもり変えると転がり抵抗力に差あり
  →計測の感度あり

感想
 ・精度がとても高い
 ・チェーン効率の仮定が不要で良い
 ・計測時間が短いので姿勢のぶれが少なくて良い
 ・トルクをかけていないので実走姿勢と異なる可能性あり
 ・路面が実走と異なる
 ・転がり抵抗による減速分が重さによらないのは一見意外
  →慣性が増し転がり抵抗力も増すため
 ・屋外実走で測るとすると勾配と風をゼロにするのは難しい
  →往復2回セット計測して相殺するとよさそう
 ・本当にこんな精度が出るのかやってみたいが手間がかかる
2021.06.19 Sat l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
質点モデルでパワーから速度を求めるときに、3次方程式を解く必要がある。
(空気抵抗による損失が速度の3乗に比例するため)
3次方程式を解析的に解くのは大変なので、
通常は数値的に解くことが多いが、
(例えばエクセルでゴールシーク)
解の公式を使っている例を初めて見て驚いた。
A deceleration model for bicycle peloton dynamics and group sorting
最後のappendixに記載がある。
こうして見ると大して複雑でもない気がしてくるから不思議。
2021.06.12 Sat l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲