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基準値のからくり」を読み返した。
何年も前に買ってから、年末掃除のフィルターを何度もくぐり抜けた。

食品や公害などの基準値の成り立ちをまとめた本。
基準値を決める方針は主に3通りある。
1.ある濃度以下で毒性がなくなる閾値がある場合、無毒になる値。
 ゼロリスクの設定が可能。
2.閾値が無い場合、受け入れられるリスクを決め、それに相当する値。
3.現状の値を元に、技術やコストの観点で実現可能な値。リスクと無関係。

いずれも方針に従い、余裕を見て基準を決める。
例えば、毒性についての動物実験の結果を引用し、種の間の差として10倍を想定。
3は、農薬の使用量などに見られ、元々は農薬を通常より使いすぎていないかの管理目的の値の流用。

安全とは、受け入れられないリスクのないこと。
受け入れられるリスクとは、
例えば労働者の死亡リスクを参照する。
英国では、10万人あたり年間3人。
(最新の統計[1]を見ると、
日本では、10万人あたり年間2人程度
アメリカでは、10万人あたり年間5人程度、
先進国以外で統計のある国では、10万人あたり年間10人程度、
インド、中国の統計はない)

餅は一口あたりの死亡率が高いが、食文化に欠かせないため受け入れられるリスクが高く、規制されない。
同様に、コメとひじきも無機ヒ素の濃度が高く、発がん性が高いため規制する国もあるが、日本では規制されない。


重要な視点は、
・あるリスクを回避したときに他のリスクが増えることを考慮して、トータルでリスクを減らすこと。
・特定の一つの事態を想定するより、事故の規模と確率分布からリスクを計算するとよい。
・基準を突破した場合に何が起こるかは、値の意味を調べないと分からない。
・受け入れられるリスクは時代と共に変わる。
 例えばセクハラに該当する、社会通念的に平均的な人が許容できない程度など。

感想
・許容できるリスクは人によって異なるので、選択肢を与えられることが大事そう。
・社会が許容できるリスクを把握するには、アンケートをとり続けるとよさそう。
・海外で事業をしている10万人の企業であれば、平均して年間2人以上は亡くなる。
 建前はゼロ災と言うしかないのだろうが、本来は現実的な許容リスクを設定することで、
 事業活動ができるようになる。

[1] https://www.ilo.org/shinyapps/bulkexplorer36/?lang=en&segment=indicator&id=SDG_F881_SEX_MIG_RT_A
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2022.12.31 Sat l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
mRNAワクチンのざっくりした理解。

核酸(nucleic acid:NA)を人工合成する技術は確立されていた[1]。
核酸は薬として利用できる。
投与した核酸は、そのものは薬にならず、所望のたんぱく質を細胞内で生成させることで治療効果を得る。
長所は、配列が決まれば大量生産が容易なこと。

コロナの前に、核酸のうちmRNAを薬に利用する分野が盛り上がっていた[2]。
長所は、原理的にあらゆる細胞に有効、がん化リスクがなく安全。
短所は、不安定で分解しやすい、輸送のため免疫反応の制御が必要。
短所を克服する技術が向上してきた。

一方で、ワクチンの従来方式には、主に生ワクチンと不活性ワクチンがあった[3]。
mRNAを投与してウィルスのたんぱく質を作らせる、新たな方式のワクチンが開発中だった。対コロナではその量産化の速さがよくフィットし、治験が一気に進み普及した[4]。


[1] 核酸の化学合成法、化学と教育57巻7号(2009年)
[2] 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス,PMDRS,50(5),242 ~ 249(2019)
[3] ついに始まったmRNA医薬の時代、日経サイエンス2022年6月号
[4] 「ワクチン」、ウィキペディア日本語版
2022.12.26 Mon l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
ふと目にとまった、「ラテン語の授業」を読んだ。

ラテン語といっても、宗教や歴史についての内容が多い。

・現在でもラテン系ヨーロッパの国、例えばイタリアでは、高校卒業資格を取るための試験科目に古典語(ラテン語、ギリシャ語)がある。授業の目標は、言葉を通じた文化や思考の枠組みの理解。

・5世紀の西ローマ滅亡後、教会が公教育を担った。神学が教えられ、教会の法令が市民法より優先された。

・中世には、現実の問題を聖書が解決しないことを人々が悟り始めた。そして世俗の学問の力を借りて問題解決をしようと、11世紀以降大学が設立された。最初は法学を教えた。

・大学のモットーには、真理という単語がよく使われる。真理とは、聖書の一節に着想を得たもので、宗教と合わせて理解すべき。「真理はそれ以外の何物でもなく、外部の力によらず、当然受け止めるべきもの」と考えられていた。

・筆者は、宗教とは集合体が休息する庭と考える。人々は広い自然の中の異なる宗教の庭で、各々の真理を語る。自然は、すべての真理を異なる存在として受け入れる。

・すべては過ぎゆく。


感想
現実の問題の中心は、中世では人口や食料生産の増加だっただろう。
問題を解決する科学や経済が広く受け入れられた。
今や問題の中心は、持続可能性や人権(多様性)に変わったように見える。
科学(技術)は相変わらず問題解決に役立ちそうで、特に機械化と無尽エネルギーだろうか。
経済原理はしばらく変わらなさそうだ。
人権に関して、紛争はヒトの進化的な特性が元のようで、技術では解決しなさそう。
この本のような思想も大切だろう。
2022.12.24 Sat l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
メニューをやるための良い道を見つけるには、
一つはストラバで探す方法がある。

ただ、これは人の轍を踏むことになる。
原データを出発点にして新たに開拓をしたいときには、
国土地理院の地図の等高線を眺めるのが良さそう。

先日電動自転車の出力測定のために急勾配の坂を探した時には、後者から見つけた。

結局、ストラバのランキングはすでにあったので結果は同じだったかもしれない。
それでも、探検をした気分にはなる。
2022.12.18 Sun l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
久しぶりに1分の坂でもがいたら意外と踏めた。
300W以上出すのは半年くらいぶりなのに。

何が維持に寄与したか。
最近はほぼローラー200W5分しかやっていない。
それも週一回やればいい方。

ただし、50rpmでやっている(30Nちょい)。
このトルクで100rpmで回すと400Wになる。
つまり、もがいてもトルクには慣れている。
これがポイントな気がした。
2022.12.10 Sat l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲