fc2ブログ
風洞実験は現象だから「誤り」は存在しない。
さらに言えば現象は常に「正しい」。
一方で、理論は現象を予測するものであり、予測との乖離が大きいと「誤り」になる。

風洞実験の誤差は、測定精度の問題である。
起きている現象を正しく測定できていないと、「正確でない」風洞実験となる。
仮に正しい風洞実験値を定義するとすると、標準化された測定条件(平均風速、風速分布、乱れ度等)における測定誤差の小さい測定値だろう。
最終目的は実走での速さの予測だが、実走の条件は不定である。
標準条件は業界で決めるしかない。

条件は複数あってよく、むしろ一つの値だけ示すのは危うい。
実走条件は確率分布みたいなものだから、それに応じて抵抗を定義してもいい。
スポンサーサイト



2023.04.30 Sun l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
2019年の春に東大の総合研究博物館の展示を見に行った。
その時のメモが発掘された。
当時のパンフレット

未だに覚えているもののうち、実物大のホルスタイン種の牛のはく製の迫力や、数十体並んだ鶏のはく製の異様さを差し置いて、責任者の教授がいきいきと説明するその語りぶりである。ニッチな分野ではあるが、その突出ぶりに感銘を受けた。館内を回っていると、その著書を本人が無料で配布して回っていた。

ニワトリ 愛を独り占めにした鳥
家畜化の歴史を詳しく述べている。今読み返さずに覚えているのは、家畜化以前の鶏は決して家畜に適した動物ではなかったこと。闘鶏で身近ではあったが、食料としての価値は低かった。家畜化に至った経緯には所説あるが謎が多い。

その後この関連で、動物の本物の脳をビニール手袋ごし触れるイベントに参加した。
往復はがきで申し込むというハードルを超えられた者だけが集まった。
ずっしりとした重さと柔らかさを感じたが、それ以外のことはあまり覚えていない。
脳の色は生きている間は白く、死亡すると徐々に黒くなるという説明があり、なぜ黒くなるのかと質問したら分からないとの回答だった記憶がある。

定期的に尖った展示をしているのでたまにチェックしていきたい。
https://www.um.u-tokyo.ac.jp/exhibition/index_past.html
2023.04.29 Sat l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか

練習をつきつめていって、認知の科学的理解へ興味が向かうのは自然な流れ。

・世界は大きくは変わらない前提で、習慣によって、人は複雑な世界でうまく生きている。
・習慣の特徴は、自動的に行われることと、引き金によって目標に関係なく実行されること。
・自動化することで考える行為を減らせる。

・習慣(悪習)を変えるのは難しいが、最善策の一つは環境を変えること。例えば引越し。
・悪習の引き金を徹底的に環境から取り除くと有効。
・自制心を働かせるのではなく、働かせる必要のない状況を作るとよい。

・ドーパミンの作用等の習慣化のメカニズムの解説(流し読み)

・心理学、脳科学分野の論文のうち、再現性が確認されたのは3割程度との報告がある。
・何かを説明する(有無で有意差がある)仮説を設定するとき、
 有意差の現れた結果が論文になり、有意差の無かった結果は公表されにくい。
・ワクチンの陽性を仮説の有意差ありに対応させると、偽陽性の割合が多くなる。

・現代の肥満の要因の一つは食事の悪習と見なせる。加工度が異なり単位量あたり同カロリーの食事を好きなだけ食べられる実験で、加工度が高いほど摂取カロリーが多くなった。

・運動習慣を付ける実験で、数か月の実験中は続けられても、実験が終わると運動習慣は失われることが多い。


感想
・目標達成のために習慣を利用した個人的経験がいくつか思い出される。
・ヒルクライムに向けての練習の積み上げでは、帰宅後に迷う余地を与えないようにローラー台を常設し、ルーチンで10分走の”アップを開始”するように仕向けた。
・過度に食べないために、家にストックは置かない。おやつは都度買いに行く。歩いている間に、本当は食べたいのではなく、ただ気分を変えたいだけと気づくことがある。
・このブログで週に1回くらいは何かを書くようにしている。細かい体裁を気にせず自由に書く。
・最近英語を使わないので、翻訳ツールに突っ込んで手直しした英語版を作ろうとしたが数本で止まった。続ける上で何が足りないのだろうか。
・読んだ本の整理は、
 キンドルで流し読みしながら気になった箇所に印付け、
 最後まで行ったら印のリストだけ読む、
 このうちポイントのみ書く、
 とやり方は決まっている。
・通勤でラジオを聞いていると、全く無意識のうちに電車を乗り継いで会社について途中の景色を思い出せないことがある。
・いちいち考えるのは大変で、環境設定するとよいのはその通りと思うのでこれからも利用したい。

・本書の原稿はコロナでロックダウンが始まって3か月のアメリカの都市で書かれた。コロナで身についた新しい習慣は、コロナ後に生活が元に戻らないのではと筆者は予想した。
→この予想ははずれたようである。ここで、過去の習慣に戻ることと、新しい習慣が持続することは、どちらに転んでも”習慣を変えるのは難しい”と言えてしまうのではと思った。
2023.04.22 Sat l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
前回と少し違った見方をしてみよう。

変数は、
・自分のCritical Power(CP)
・相手のCP
・コースタイム(長さ)
・勾配
の4個なので、
グラフを書くには、縦軸をタイム差として、
横軸を一つ選び、もう一つは複数の線で表し、残りの二つは固定せざるを得ない。

前回は横軸を相手のCP、線をコースタイムとした。

今回、横軸を相手のCP、線を勾配とし、
自分のCPを250Wに固定し、コースタイムを2分に固定すると、
timediff1.png

勾配が変わったときにどう補間すればよいか考えるため、
横軸を勾配にすると
timediff2.png
勾配に対して線形補間でよさそうである。

コースタイムが変わったの補間方法を考えるため、
横軸をコースタイムにすると、
timediff3.png
こちらも線形補間でよさそうである。
ただし、ゼロ点を通らないことに注意。
例えば相手のCPが300Wで1.5分のタイムを求めるとき、1分のタイム差5秒を1.5倍するのではなく、1分と2分のタイム差を求めて線形補間して、(5+14)/2=9.5秒。
多少の外挿は問題なさそうである。

より簡単にするには、4個の変数を入力したらタイム差を出力する窓を作ればよい。
もちろん、これは目安なので走りながら適宜調整するとよい。
繰り返した場合に、強い人ほどパワーの低下が少ない知見もあるので、経時的な調整も必要。
2023.04.16 Sun l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
前半に続いて、後半を読んだ。

多細胞生物の謎の一つとして、(ほぼ)全ての細胞にDNAが揃っていながら分化して、各々別の機能を担うことがある。
緊急事態では分化がリセットされ、異なる機能へ改めて分化することがある。
この柔軟性を細胞の”しなやかさ”と呼んでいる。

また、分化する可能性を取り戻すこともある。
これは、若い胚の一部と混ぜた後に本来の発生を続けることで示される。
このような興味深いいくつかの事実を示した上で、”しなやかさ”の仕組みはほぼ何も理解されていないと指摘。

ここで、素人の自分でもiPS細胞が連想される。
iPS細胞を説明できるか考えてみたら、ほとんど何も知らないことに気づいた。
イメージとしては、分化をリセットし、様々な機能へ改めて分化できる細胞くらい。

少し調べると、ブレークスルーは特定のいくつかの遺伝子を導入してiPS細胞を作れたこと。
がん化リスクを抑える改善と臨床応用が試みられている。
本書が出版された35年前の時点での夢の一部がいま実現しているのだなと思った。
2023.04.13 Thu l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
我々は生命を創れるのか

生命の発生については、以前にも少し考えたことがあった(記事)。
持久力を考えてミトコンドリアに行きつき、その起源の共進化から生命誕生へ行きつくのはもはや自然な流れ。
本書では、分子の視点のアプロ―チとは違った、動く人工細胞レシピも紹介され、実感がわいて面白かった。

驚きポイント
1.新種アミノ酸の合成
アミノ酸のシステインはそれ自体を含むタンパク質によって作られる。
作るために必要なたんぱく質のシステインを、生物無しで生成し得る他のアミノ酸に置き換えても、システインを作れた。
つまり新しいアミノ酸が合成されうる。

2.鉄硫黄クラスター
有機物を分解してエネルギーを得る呼吸には鉄硫黄タンパク質が不可欠。
鉄と硫黄といえば鉱物で、その表面で代謝のような酸化還元反応が発生した可能性がある。

3.ATPと核酸
アデニンは遺伝情報を構成する4つの核酸(RNA、DNA)塩基の1つ。
アデニン+リボース=アデノシン(ヌクレオシド)
ヌクレオシド+リン酸=ヌクレオチド
ヌクレオチドの長鎖=核酸

エネルギー通貨のATPはアデノシン+3リン酸
アデノシン+1リン酸(AMP)はヌクレオチドで、核酸そのものの一部。
ATPはエネルギー通貨という断片的知識が遺伝情報そのものと結びついてハッとした。


今分かっていることは断片的ではあるが、現存する生命が一部を非生物的に作れる分子に置き換えても機能する場合があることと、新たなアミノ酸を合成できる例がある事実から、漸化式のパーツの存在は証明されていると思われる。化学進化がうまく回れば、長い時間をかけて生命は発生し得るという素人想像はできた。しかし具体的なプロセスの解明は、カオスの初期値に近づこうとするようなもので、困難に思える。
2023.04.02 Sun l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲