fc2ブログ
育児休業のすすめ:ニューヨークで専業主夫になった物理学者

 面白い文章を読んだので、自分も子供が生まれてから2か月弱の育児休業を取ったときの様子を書こう。まだかろうじて記憶のあるうちに。大変だったことは忘れ、写真や動画にある「良い場面」だけが美しい記録として残るだろう。

◆生まれるまで
 2020年時点において日本のサラリーマンが育休を取ることは、取得率上昇の兆候があったとはいえ、依然容易ではなかった。というより、先進的な取り組みには縁はなかったので、考えたこともなかった。幸いなことに、自分の職場に育休を取った先人がいた。自分が取れたのは先人のおかげである。日々業務に追われていると引継ぎなんてできると思っていなかったが、なんとかなった。結局なんとかなるという経験は貴重であった。
 驚いたことに、育休取得には1か月以上前に開始日と終了日の事前申請が必要であった。予言者ではないが、日本のサラリーマンであるからめげずに申請をするのである。出産後数日は妻子は入院することから、予定日の1週間後を育休開始日に設定した。
 幸運なことに、予定日を少し過ぎて母子ともに無事生まれた。コロナで立ち会いは許されず、出産後に連絡を受けてから病院に向かえば数十分だけ面会できる段取りであった。着信を受けてから無事を聞くまで100msごとに祈りをささげた。

◆生後1か月まで
 狙い通りのタイミングで妻と子供が家にやってきた。子供はあまりに小さいので、部屋の片隅の布団に寝かせておいて本当に大丈夫なのか不安であった。その日から妻と二人での24時間体制での授乳と仮眠のローテーション(先頭交代)が始まった。母乳を搾乳機で哺乳瓶に貯めて冷蔵保存する作戦により、自分も授乳のローテーションに加わった。途中から粉ミルクも併用した。哺乳瓶の消毒は電子レンジで簡単にできるアイテムを駆使した。
 断続的仮眠といえば、学生時代に出張で実験装置を借りた時の徹夜の測定があった。それも高々1週間スパンであり、1か月以上続く負荷は未体験であった。なんとか体調が大崩れすることなく乗り切れたし、乳児死亡率の高い1か月を無事に乗り切った。

Tips
ミルク作りのポイントはこちら。ここで大活躍したのが温度計付き電気ケトルである。
寝かしつけのポイントはこちら
当時の感想はこちら
工夫として良かったのは、GoProをヘッドマウントすると両手で育児しながら動画を撮れることだ。

◆生後2か月まで
 生後1か月から一緒に外出できる。コロナ禍ではあったが、今しかできないと国内旅行に勤しんだ。前述のミルク作りアイテムとオムツと着替えを持ち、ミルクの時間を想定した移動をすれば、旅行はできる自信がついた。幸いどこも空いていたし、新幹線ですら割引をしていた。行先は湯河原下田金沢などで大変良かった。
 育休はここで終わった。コロナでほぼフルリモートだったので復帰は軟着陸できた。周りから育休の相談を受けることもあった。休業中の給料は会社からは出ないが、雇用保険から一部出る。しかし、自分で必要書類を集めて申請しないともらえない。あとは育休期間を決めるときに賞与のタイミングに留意するとよい。

 ついでに休日に一人で終日面倒をみるときの様子を備忘がてら書く。

◆1歳まで
 徐々に夜長く寝られるようになる。わが子は早寝早起きで、18時くらいに寝て5時くらいに起きた。朝が早いので大人も21時過ぎには寝た。朝起きるとおむつが決壊する前に替えて朝飯。離乳食は週末に大量に作って小分けに冷凍し、平日は解凍して時短した。うちの特徴として朝に風呂に入れた。午前中は近くの公園で遊んだり、店が開きだしたら買い物をしたりして、11時過ぎに昼飯。うちの特徴として、昼の寝かせつけが大変であった。ベストエフォートは抱っこしたまま家の中を歩き続けること。布団に降ろすとほぼダメで、座ると起きることもあった。午後も近くの公園や図書館や家で遊び、夕飯を食べて寝かせる。夜は比較的すんなり寝た。

 街のインフラは充実している。五輪のおかげか街中にエレベータやオムツ交換台がある。また、家が駅まで徒歩3分の立地で大正解である。駅前ビルにほぼすべての診療科があるし、雨でもベビーカーカバーを装備すれば外出も容易。外出で特に注意すべきは空腹度である。電車での移動中に空腹で機嫌を損ねると大変なので、携帯食料の残量に注意する。
 うちの周りは特に子供が多く、通常の認可保育園入園は希望を欄外まで書いても無理であった。妻と手分けして20園以上見学し20園近く書いた。家の近くだが2年間しかいられない認可小規模保育園になんとか滑り込んだ。想像以上に良くしてもらっていて、費用はかかるが時給換算したら全く成り立たずそれなりの補助がありそうなので、個人的には高いとは思わない。マシな自治体に移動したら家賃が上がるだろう。

◆2歳まで
 20時くらいに寝て6時くらいに起きるようになった。法的に、1歳を過ぎると自転車に乗せられる。当然電動自転車である。一気に行動範囲が広がり、5キロ圏内くらいならストレスなく行ける。幸い適当な公園がたくさんあるので飽きない。準備しながらその日の気分で行先を決める。
 公園での無限滑り台ループや家での積み木など、「自分が相手をしなくても子供が自律的に遊ぶ状態」がたまに訪れるようになった。見ているだけで良いので少し楽である。一方で、体重が10~15kgくらいになると、素手で抱っこして長時間歩くことが困難になってくる。引き続き携帯食料の残量には注意する。来た電車に乗ろうとしたり、降りる駅で降りようとしたときに座り込みなどが生じた場合、焦って無理に移動すると事態が悪化するのでいけない。次を待って機嫌を見計らったり、落ち着いて折り返したりすればよい。

 通常運転時は良いが、風邪を引いた時が大変である。熱が閾値を超えると保育園から呼び出される。翌日は数駅離れた病児保育に預けるか、自分か妻のどちらかが会社休むことになる。病児保育には事前に受診が必要で、コロナの混乱もあり常に混んでいた。頻度として、平均して保育園を月に3,4日くらい休んだ。土日を含めると風邪の期間はもう少し長い。ほぼフル出社になり常に呼び出しのリスクにさらされながら仕事をしていた。平日の多くは妻に対応してもらった。2歳半くらいになると風邪の頻度は減り、保育園を一日も休まない月が出てくるなどつかの間の平安が訪れた。
スポンサーサイト



2023.05.27 Sat l 育児 l COM(0) TB(0) l top ▲
シルバー民主主義 - 高齢者優遇をどう克服するか

年金、医療などの社会福祉制度や企業の雇用形態には、持続可能性の観点で問題が山積みで今にも倒れそうである。
しかし、政治家が当面の選挙に勝つために高齢者の既得権を守ろうとするシルバー民主主義が影響力を持つため、改革は進まない。

高齢化は先進諸国で共通だが、日本の特徴として、
・高齢化が特に進んでいる
・若者の投票率が低い
・負担少なく給付多くという矛盾した要求の下で不健全化しやすい。例えば米国では小さな政府vs大きな政府の対立軸がある。

年金給付を下げたら訴訟が起きた。
民主主義なら、高齢者を納得させて改善するしかない。

例えば、借金が積み上がって何が問題か。
確実なことは、ある時点で信用が失われて価格が暴落し、新規発行不能になること。
国債からの穴埋めがなくなり、社会保険料収入(2015年で55%)と給付を同じにすると、単純計算で給付が55%に下がる。
それがいつかはわからない。
今の高齢者にも目の前にそのリスクがあると知らせることが脱却の一手である。

医療保険や税制も同様。
目を覆いたくなるような事実が並んでいる。
制度の前提の家族構成などが何十年も前から変わっていない。
高齢者優遇を変えるインセンティブに乏しく、現状維持が続く。
日本が相対的に貧しくなる。


感想
シルバー民主主義はシステムとしてあたり前の状態に思える。
誰が悪いということはなく、仕組みの特性である。
厚労省が年金100年安心と主張していることなど色々と目を疑うが、
それも人々の総意が選んでいるということ。
いくら妙案でも高齢者に不利な、または不利と思われる変更は受け入れられない印象。

高齢化は少産少死を戦略とする生物の末路として必然と思われ、
民主主義は比較的マシなシステムと考えると、
何かが生まれ繁栄して消滅していく自然サイクルの後半にいるようだ。
カリスマの登場に期待するにしろ、皆で実態を知ることから始めたいところ。

随所にムダがあるから、費用を抑えながら高齢者の満足度を上げる策はあると思う。
例えば、話し相手になるロボット(ChatGPT搭載のモニター付きアマゾンエコーくらい)を配るので、代わりに財源として給付を下げますとか。
病院に行くよりも楽しいと思えるかもしれない。
テクノロジーが間に合うかどうか。(温暖化の問題に似ている)
2023.05.19 Fri l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
ビルゲイツ氏の「地球の未来のため僕が決断したこと」(原題"How to avoid a climate disaster")

炭素排出ゼロ化についての総まとめ。
ざっくりと把握できる。

現状の内訳はおおよそ、
 生産(セメント、製鉄、プラスチック) 3割
 発電 3割
 食料生産 2割
 輸送 2割

排出ゼロの方針
 1.炭素排出ゼロで発電(再エネ、核融合など)
 2.上記内訳の発電以外を電化(人工食料、電気を水素に変えて貯蔵・輸送など)

やれること
 技術に投資←政策←個人の日常からの意識変革


感想
導入でのなぜ炭素排出ゼロが必要かの論拠がもう一押しほしい。
例えば地球の自然な温暖化と、人の影響を分離できるのかなどの懐疑論に応えられない。
個人的には、大気二酸化炭素中の炭素13同位体の割合が最近減っていて、炭素循環への化石燃料(生物の炭素13は少ない)の寄与を示唆、が強いと思う(メモのリンク)。これ以外でも何でもいいけど。

ごくたまに路上で水素自動車MIRAIを見かけるけど、自転車には及ばないぞと思ったりはする。
健康を増進し、社会保障費の一部を科学技術に回してほしい。
2023.05.14 Sun l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
https://www.amazon.co.jp/dp/4480684468/

信念の問題とされがちな生の目的や価値に対して、生物的な視点から答えようとしている。
たんたんと端的に書かれていて説得力があった。


概要

生命とは増える能力が作り出した物理現象である。
生命の出発点は、増えて遺伝する性質をもった物質が偶然現れ、進化のループが回り始めたことにある。

現代人は進化的には狩猟採集時代からあまり変わっておらず、本能も残っている。
例えば狩猟採集生活では平等が重んじられた。
なぜなら自分が獲物が取れなかった時に分けてもらえないと死活問題だから。
現代では、技術によって平等は死活問題ではなくなり、ギャップが生じた。
現実が本能にそぐわないとき、悩みが生じる。
悩みの解決には、悩みの生物的な由来を理解し、悩む価値があるか吟味するとよい。
無いと思えば、無視して自由に生きればよい。

生物の生存戦略には、多産多死と少産少死の二方向がある。
人は後者の最たるものである。
死ににくくなる、人の維持コストが増大、出生数が減少、は生物的に必然の流れ。

人に生きる目的や使命はない。
なぜなら人は増えて遺伝する物理現象の末裔だから。
広い宇宙といえど、生命の持続期間を考えると今この瞬間には地球が唯一かもしれない。
この希少な生命と文明の維持には価値がある。
自分の命は自分と関わる全ての人の命の一部でもある。
子孫を残すことは全てではなく、社会の中で自分の役割を果たすとよい。

筆者は、人の文明の維持は結局他の生物と同じことで物足りないと感じる。
ミームは、人の頭の中に広がる考え方やアイデアである。
芸術や文化、研究を含むミームは、生命と同じく頭の中で増えて淘汰され進化する。
ミームを発展させることが、増えるものの既定路線から外れた、予想のつかない魅力的な世界につながるかもしれない。
2023.05.07 Sun l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
完全休養日をもらったので一泊二日で走りに行こうと思った。
まず関東マップルを眺める。
上りたい。良い道だけ走りたい。

学生時代にできなくて今できることは、新幹線の利用。
長野を走るには体力がないから那須と磐梯のはしごに決定。

ログを公開する方法としては、
ガーミンのログの公開範囲をpublicにするのが簡単で良さそう。
stravaはアカウントを持っていないと見られない。
それ以外のサービスには自動転送設定していないので面倒。
那須のログ
磐梯のログ

予定のルートをRide with GPSで作って、ガーミンのサイコンに入れた。
この準備をするのは初めてだが簡単だった。

新幹線で新白河駅へ。家から乗り換え一回で楽。
駅を出てすぐに那須に直通の道に出られるので楽。
装備は10年くらい前にシマノシューズを買ったときに付いてきた簡易リュックに食料としてコンビニパンと防寒着としてユニクロのウルトラライトダウンを入れた。リュックの紐を短くしてなるべく背中の上方で背負うことで腰痛を回避できる。簡易防寒着としてパールイズミのレインジャケットを上りの途中まで着たあとリュックに入れた。
基本的に晴れたものの、あいにくの強風と寒さと時折の小雨のため、那須高原道路の終点まで行く予定を途中で断念。
福島から栃木に県境をまたいだところで路面が急激に悪くなったことの影響もある。
45キロ940mアップ。




那須を下って新幹線で福島に移動し、飯坂温泉で一泊。
電車のアクセスが良いわりに源泉かけ流しもあって温泉街もそれなりに人がいる。
全盛期から降下気味なことは否めないが。

翌日の磐梯も福島駅からすぐに直通の道へ出られる。
穏やかに晴れて予定を完遂。
70キロ1580mアップ。
200W以上出さないようにしたが、急勾配ではギアが足りず48rpm220Wくらい出た。

磐梯は2回目と記憶していたが、道は全く記憶になかった。
その絶景ぶりは渋峠並みで、記憶に残らないのは不思議。
よく見返すと、以前走ったのは米沢からの西吾妻スカイバレーであり、裏磐梯へ通じる違う道だった。
2005/8/17の記録
記憶はあてにならないものだ。
この時は蔵王、磐梯、那須と3連戦で最後の那須を断念していた。

火山ガス地帯では、空気の吸込み量を最小化するペースを少し考えた。
結局、それまでと変えずにたんたんと進むのがよいとの結論に至った。
なぜなら運動強度を上げると呼吸量(および血液循環量)は下に凸の曲線で増加するが、通過にかかる時間はたいして減らないと感覚的に思ったからである。
幸い、多少温泉の匂いがする程度で特に影響はなかった。
街中で感知される温泉の匂いの方が強いくらいであった。
ただ、匂いと有毒ガスの濃度に正の相関があるかはその場では不明であった。

調べてみると、環境省のガイドラインによると、中毒事故のほとんどは硫化水素が原因であり、濃度が高いほど匂いは強い。ただし低濃度でも長く吸うと中毒の恐れがあるとのこと。「長く」の時間スパンが不明だが、火山ガス地帯を通過する数分程度では問題にならないと思われる。










ヒルクライムレースを走る体力は無いが、ゆっくりなら楽しんで走れることが分かった。
那須が心残り。日帰りも可能なのでそのうち再チャレンジしたい。
2023.05.03 Wed l ツーリング l COM(0) TB(0) l top ▲
パイオニアがシマノに買収されて、解析ソフトが切り替わったのが2021年6月末。データの移行がなかなかできなかったのと、ほとんど乗っていなかったので、見ていなかった。久しぶりに見てみたらパイオニア時代のデータも通しで見られるようになっていた。ガーミンからシマノへ自動転送設定をしていたので、最近のデータもある。
今さらだが、見やすい。ゴールデンチーターみたいのにfitファイルをローカルに落として処理する手間も不要。
シマノコネクト2

シマノコネクト

シマノコネクト3

データを引き継いでもらえたのはうれしい。
蓄積が大事だから、短期間でサービス終了せずに続けてもらえる安心感があるので良い。
少なくともデータをまとめてダウンロードできることが必要条件。サービス終了後に移行できるので。
一番息が長いのは意外と趣味系のゴールデンチーターだったりする。
2023.05.01 Mon l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲