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 ライドの身体的な負荷を正確に数値化することは重要である。例えば、疲労と回復のサイクルをうまく回すための疲労管理やレースでのパフォーマンス分析では負荷を正確に評価したい。
 負荷を表す指標として平均パワーがある。この指標の問題点はパワーの変動の情報が含まれないことにある。例えば①200W30分と、②(400W1分+100W2分)×5本の平均パワーはともに200Wだが、後者の身体負荷は明らかに高い。
 高い負荷を高く評価する重みづけをした指標としてNormalized Power(NP)がある。NPの計算は、測定した時刻i秒のパワーをP(i)、データ数をNとすると、以下の2ステップとなる。
1.パワーの30秒移動平均パワーP’_iを求める
  Pi’=(Pi+Pi+1+...Pi+29)/30
  ただし最後の30秒は計算対象外
2.4乗平均をとる
  NP=((P1’^4+P2’^4+...PN’^4)/N)^(¼)

ステップ1の理由 
 実際のライドのパワーデータには変動がある。身体的な負荷が生理的な現象であると考えると、パワーの瞬時の変動に対して負荷は時間的にも振幅的にも追従しない。応答の違いを表す方法として、パワーの移動平均を用いる。移動平均をとる時間は30秒とされる。その根拠は、クレアチンリン酸、心拍数、VO2等の生理指標の回復局面での半減期(消費量の半分が回復する時間)が30秒程度であることによる[1]。

ステップ2の理由
 200Wと400Wを比べると、パワー値は2倍であるが、身体的な負荷は2倍より大きいと思われる。そこで、身体的な負荷を血中乳酸濃度に置き換えて考える。パワーに対する血中乳酸濃度[mmol/L]の測定データから、血中乳酸濃度はパワーの4乗に比例する[1]。ここで、走力の異なる人のデータを比較するため、パワーは乳酸閾値で無次元化している。従って、例えば400Wの負荷は200Wの2^4=16倍と見積もられる。色々な負荷を組み合わせたライド全体の負荷の評価には、Piの4乗を足して平均をとり、次元をパワーと同じにするため¼乗する。

 生理現象は複雑である。このような指標にはある程度の根拠はあるものの、大胆に単純化しているので実際の負荷とは一致しない。そもそも負荷とは何かも曖昧である。数字は目安であって、経験を積んで自分の疲労の感覚と擦り合わせていく必要がある。感覚で把握できれば数字を使う必然性もない。それでも、目安がない状態から始めるよりは負荷の扱いの上達が早まると期待される。

 ところで、例に挙げた2パターンのNPは①200W、②285Wである。②の負荷は285W30分と同じ数字になるが、感覚と合うだろうか。

参考文献
[1]https://www.slideshare.net/acoggan1/making-sense-out-of-apparent-chaos-analyzing-data-from-onbike-powermeters
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2022.08.09 Tue l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲

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