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タバタトレーニングについての本を読んだときに、あとがきで、筆者は大学に入るまで有機化学をやろうと思っていたが、ブルーバックスの「細胞の社会」を大学一年の時に読んで生物系へ進路を変えた、自らがブルーバックスを執筆できて光栄と書かれていた。これを読んだら即買いしかない。

後で気づいたことには、上で言及されていたのは旧版で、自分は新版を買っていた。内容はけっこう違うらしいが、新版でもインパクトはあった。受精卵からの発生や細胞のダイナミクスを題材に、生物学の興味深さが平易に魅力的に描かれている。
細胞の社会(旧版)
細胞の社会(新版)

平易ながら厳しさも提示する。ある機能をもった分子の同定のための単クローン抗体法では、無数にある抗体と抗原の組合せについて、一つの細胞では一種類の抗体のみが作られる性質を利用する。例えばマウスの細胞をつぶしてラットに注射すると、ラットの膵臓では無数の種類の抗体が作られる。膵臓の細胞一つ一つを別の容器に入れて培養し、調べたい機能が抑制されるかをひたすら調べる。数千のテストの中から一つ見つけたという話。

生物の教科書に書かれるようなこの分子の作用でこれが起こるという記述の羅列は一見単調である。当方は高校1年で生物を離脱した。しかし、これらの記述が本書で書かれているパズルを解くように技巧的で膨大な実験を積み上げた結果であることを最初に知っていれば見方は変わったかもしれない。本書の出版は35年前と古いが、前提知識がほぼ無いのでどこを読んでも新鮮な驚きがある。第一の感想は、今生きているのは奇跡と感じたことであった。
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2023.03.18 Sat l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲

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