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前回と少し違った見方をしてみよう。

変数は、
・自分のCritical Power(CP)
・相手のCP
・コースタイム(長さ)
・勾配
の4個なので、
グラフを書くには、縦軸をタイム差として、
横軸を一つ選び、もう一つは複数の線で表し、残りの二つは固定せざるを得ない。

前回は横軸を相手のCP、線をコースタイムとした。

今回、横軸を相手のCP、線を勾配とし、
自分のCPを250Wに固定し、コースタイムを2分に固定すると、
timediff1.png

勾配が変わったときにどう補間すればよいか考えるため、
横軸を勾配にすると
timediff2.png
勾配に対して線形補間でよさそうである。

コースタイムが変わったの補間方法を考えるため、
横軸をコースタイムにすると、
timediff3.png
こちらも線形補間でよさそうである。
ただし、ゼロ点を通らないことに注意。
例えば相手のCPが300Wで1.5分のタイムを求めるとき、1分のタイム差5秒を1.5倍するのではなく、1分と2分のタイム差を求めて線形補間して、(5+14)/2=9.5秒。
多少の外挿は問題なさそうである。

より簡単にするには、4個の変数を入力したらタイム差を出力する窓を作ればよい。
もちろん、これは目安なので走りながら適宜調整するとよい。
繰り返した場合に、強い人ほどパワーの低下が少ない知見もあるので、経時的な調整も必要。
2023.04.16 Sun l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
前半に続いて、後半を読んだ。

多細胞生物の謎の一つとして、(ほぼ)全ての細胞にDNAが揃っていながら分化して、各々別の機能を担うことがある。
緊急事態では分化がリセットされ、異なる機能へ改めて分化することがある。
この柔軟性を細胞の”しなやかさ”と呼んでいる。

また、分化する可能性を取り戻すこともある。
これは、若い胚の一部と混ぜた後に本来の発生を続けることで示される。
このような興味深いいくつかの事実を示した上で、”しなやかさ”の仕組みはほぼ何も理解されていないと指摘。

ここで、素人の自分でもiPS細胞が連想される。
iPS細胞を説明できるか考えてみたら、ほとんど何も知らないことに気づいた。
イメージとしては、分化をリセットし、様々な機能へ改めて分化できる細胞くらい。

少し調べると、ブレークスルーは特定のいくつかの遺伝子を導入してiPS細胞を作れたこと。
がん化リスクを抑える改善と臨床応用が試みられている。
本書が出版された35年前の時点での夢の一部がいま実現しているのだなと思った。
2023.04.13 Thu l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
我々は生命を創れるのか

生命の発生については、以前にも少し考えたことがあった(記事)。
持久力を考えてミトコンドリアに行きつき、その起源の共進化から生命誕生へ行きつくのはもはや自然な流れ。
本書では、分子の視点のアプロ―チとは違った、動く人工細胞レシピも紹介され、実感がわいて面白かった。

驚きポイント
1.新種アミノ酸の合成
アミノ酸のシステインはそれ自体を含むタンパク質によって作られる。
作るために必要なたんぱく質のシステインを、生物無しで生成し得る他のアミノ酸に置き換えても、システインを作れた。
つまり新しいアミノ酸が合成されうる。

2.鉄硫黄クラスター
有機物を分解してエネルギーを得る呼吸には鉄硫黄タンパク質が不可欠。
鉄と硫黄といえば鉱物で、その表面で代謝のような酸化還元反応が発生した可能性がある。

3.ATPと核酸
アデニンは遺伝情報を構成する4つの核酸(RNA、DNA)塩基の1つ。
アデニン+リボース=アデノシン(ヌクレオシド)
ヌクレオシド+リン酸=ヌクレオチド
ヌクレオチドの長鎖=核酸

エネルギー通貨のATPはアデノシン+3リン酸
アデノシン+1リン酸(AMP)はヌクレオチドで、核酸そのものの一部。
ATPはエネルギー通貨という断片的知識が遺伝情報そのものと結びついてハッとした。


今分かっていることは断片的ではあるが、現存する生命が一部を非生物的に作れる分子に置き換えても機能する場合があることと、新たなアミノ酸を合成できる例がある事実から、漸化式のパーツの存在は証明されていると思われる。化学進化がうまく回れば、長い時間をかけて生命は発生し得るという素人想像はできた。しかし具体的なプロセスの解明は、カオスの初期値に近づこうとするようなもので、困難に思える。
2023.04.02 Sun l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
例えば2分かかる上り坂で、CP200Wの人とCP250Wの人でスタート時間に差をつけてちょうど頂上で追いつくようにするとき、何秒差が適切かは自明ではない。
また、2分の平坦では事情が変わる。
時間差のつけ方をいちいち計算するのは面倒なので、すぐ見積もれるようにグラフを作ってみよう。

走力の仮定
簡単のため、走力の変数をCritical Power(CP)の一つだけにするために、W'=20kJ一定を仮定する。
するとパワーと時間のカーブが書ける。
CPモデルの双曲線の適用範囲は2~20分程度とされていて、1分程度の短時間ではパワーが実際より高めに計算されるので注意(参考)。

タイム算出の仮定
ある長さのコースを走るのにかかる時間は、パワーが高いほど短い。
パワーは重力と空気抵抗力と転がり抵抗力に逆らう仕事に使われる(参考)。
コースの勾配は一定と仮定し、勾配ごとにパワーから時間を求める。
簡単のため、スタート時の加速は考慮せず、速度は一定と仮定する。
重量70kg、CdA0.3、空気密度1.293kg/m3、転がり抵抗係数0.004を仮定。

コースの長さをCP250Wの人のタイムを基準とした時間差のグラフを示す。
縦軸CP250W基準
timedif3.png

縦軸CP200W基準
diftime200.png
例えばCP200WとCP300Wの人の時間差は、グラフの縦軸の差分を読めばよい。
もっと長いコースの時間差を知りたければ、適当な倍率をかければよい。
CPが不明なら横軸をFTPと読み替えても概算できる。
グラフをスマホの片隅に置いておくと便利で良い。

勾配が少ないほど、タイム差は付きにくい。なぜなら重力の抵抗力は一定で、空気抵抗力は速度の2乗に比例して増えるので、勾配が少ないほどパワーを増やしても速度の増え方=タイムの縮まりが少ないから。
2023.03.26 Sun l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
10年ぶりくらいにシューズを買い替えた。
最近どんなメーカやモデルがあるのか全然分からないので、とりあえず今と同じシマノで大きくは外さないことを期待した。ぜひ試着をしたいのでアクセスの良いワイズへ。試着する代を含めて定価で買う覚悟で臨んだ。

店員から聞いた重要な情報
 考えていたモデルにはワイドが無い
   →ワイドのある一つ上のRC7にした。
 40と40.5サイズはソールの型は同一でカバーが若干大きい
   →40で違和感ないので今と同じ40サイズにした。
 BOAは壊れたら無料で交換できる

比較
並べると、同じ色とは思えない限界感が出ている。
前のシューズはマジックテープが劣化で無効化していたものの、後付けマジックテープを両面テープで貼り付けて補修していて、本人はまだまだ使えると思っている。
R315は何回か熱成型したが、今は特にそういうオプションはなさそう。

クリートとボルト取り付け後の重量
 旧 R315 293,295g
 新 RC7 279,282g

前のは確か4万円くらいで、今回は定価10%引きで2.8万円と抑えつつ軽くなったからよしとする。
ちなみに1年くらい前にスペシャライズドの1万円くらいの安いロードシューズを買ったけどあまりにもわっとしていて履く気にならず限界感を助長したのでこれくらいは出さないといけないと学んだ。
2023.03.24 Fri l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
タバタトレーニングについての本を読んだときに、あとがきで、筆者は大学に入るまで有機化学をやろうと思っていたが、ブルーバックスの「細胞の社会」を大学一年の時に読んで生物系へ進路を変えた、自らがブルーバックスを執筆できて光栄と書かれていた。これを読んだら即買いしかない。

後で気づいたことには、上で言及されていたのは旧版で、自分は新版を買っていた。内容はけっこう違うらしいが、新版でもインパクトはあった。受精卵からの発生や細胞のダイナミクスを題材に、生物学の興味深さが平易に魅力的に描かれている。
細胞の社会(旧版)
細胞の社会(新版)

平易ながら厳しさも提示する。ある機能をもった分子の同定のための単クローン抗体法では、無数にある抗体と抗原の組合せについて、一つの細胞では一種類の抗体のみが作られる性質を利用する。例えばマウスの細胞をつぶしてラットに注射すると、ラットの膵臓では無数の種類の抗体が作られる。膵臓の細胞一つ一つを別の容器に入れて培養し、調べたい機能が抑制されるかをひたすら調べる。数千のテストの中から一つ見つけたという話。

生物の教科書に書かれるようなこの分子の作用でこれが起こるという記述の羅列は一見単調である。当方は高校1年で生物を離脱した。しかし、これらの記述が本書で書かれているパズルを解くように技巧的で膨大な実験を積み上げた結果であることを最初に知っていれば見方は変わったかもしれない。本書の出版は35年前と古いが、前提知識がほぼ無いのでどこを読んでも新鮮な驚きがある。第一の感想は、今生きているのは奇跡と感じたことであった。
2023.03.18 Sat l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
基本的に乗らない状態が1年以上続いていた。
修善寺での都ロードが再開したことと、やっぱり脳活動と身体活動のレベルは連動する気がすることから、当社比また乗り始めた。

ターゲットは、修善寺でまともに走ることを考えると2分300W5本はほしい。(以前は340Wくらいではできた記憶)
前提として、諸先輩方の活躍からして問題は練習量であって、年齢的な問題はないと考えている。スポーツの良い側面の一つは元気な先輩を目撃できることと誰かが言っていた。

当初はローラー5分200Wで呼吸が苦しかったところから、
約2か月で2分270W5本をなんとかできるくらいまで戻ってきた。
この過程で新たに取り入れた方法が2つある。

1.タバタ
これまで一度もやったことがなかった。最近実走で1度、ローラーで2度トライして、ローラーではぎりぎり完遂した。もちろんきついのだが、その負荷レベルは坂でちょうどよい相手とぎりぎり競り合うくらいのイメージであり、これをローラーで予定調和的に再現できることに意義があると思った。解説書には、「実施後30分くらい動けなくなる」と書かれていてその域にはまだ達していないが、実施後30分吐き気くらいはして、実施後1週間くらいは体のキレが良い気がする。

2.ロードバイクスキルアップトレーニング
何年か前に一度福田さんの講習を受けて殿筋と腸腰筋の動員が大事なことくらいは覚えていた。本は以前買ったが真面目に取り組んでいなかった。一通りやろうとして半分以上はできないのだが、その後の「調子」は明らかに上がった。以前乗れていた時の上体の押さえ方がわりとピンポイントで戻ってきた感覚があり、走力回復の近道になった気がする。2分5本の2本目にダメになってもプランク!と念じて腹に力を入れ直すとまた踏めたりする。
2023.03.12 Sun l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
「学び」の構造
を読んだ。

学ぼうとするとき、まず「おぼえ」ようとする。
「おぼえる」と「わかる」は違いそうである。
「わかる」とは、おぼえた知識ではわからないところがわかること、
その空白について問い続けること、
過去の経験を含めた出来事を関連づけ納得すること(この意味で主観的)。
いつまでも深くわかりつづけることになる。

教えることの機械化を考えると、目標の明文化が必要。
コロンブスがアメリカを発見したのような命題を教える場合、
教えられている側がわかったか、おぼえただけかは外から判別できない。
明文化は困難だが、わかった状態の表れとしての兆候を手掛かりに導くことはできる。
学び続けることでより深くわかっていく。

学びの過程は段階に分けられる。
丸暗記、目標に照らした選択、目標の探求と一貫性の獲得、一貫性を他人に広げる。
学びの問いも段階に分けられる。
前提や当たり前を問う、経験に照らして意味を問う、関連を問う、世の中での役割を問う。
なお、学びの領域には知識の他、芸術や宗教も含まれる。

何のために学ぶかという問いは、人間とは何かという問いに行きつく。
世の中をよくしていくため、問い直し、直観に従って方向を定め、理性によって学び続ける。
人間とは学ぶ存在である。


感想
・文献を読んで何もわかっていないことに気づいたとき、わかったことの傍証の一つは得られたのだろうと思った。
・教えることの機械化はまさに行われつつある。本書の出版は1975年と50年近く前である。わかったことの検証不可能性は変わっていないが、教師の省力化への貢献に意義があろう。
・小中高校生にとっては入口のおぼえるところに動機付けが必要で、ロジック以外の授業関連の身体情報や教師の人間的魅力は大きな要因と思うので、機械化の難しい部分がある。
・わかる経験は重要で、例えばゲームやスポーツを突きつめてわかると、知識の領域でも応用が利きそう。
・わかっている人の雰囲気を見ることによっても、わかる状態に近づくヒントが得られそう。
2023.03.05 Sun l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲
無酸素性運動能力の定量化について

『今日から始める「タバタトレーニング」』の備忘メモ
体内の機序はさておき、外から観察できる酸素摂取量を出発点とする。

10分以下で疲労困憊に至る一定負荷の運動を考える。
・最大酸素摂取量以上となる測定できない酸素需要量について、負荷と酸素需要量の線形関係から外挿して推定。
・総酸素需要量を酸素消費量と酸素借に分ける。
・10分以下で疲労困憊になる運動を複数の負荷で行い実測すると、疲労困憊時点での酸素借は2分程度までは時間が長いほど上昇し、2分~10分ではほぼ同一の最大値となる。この最大酸素借が無酸素性運動能力の指標。


気づき
1.W'=(Power-CP)×時間は、酸素借に対応する。
2~10分の負荷では、酸素消費は最大(VO2max)であり、最大限の有酸素性エネルギー供給で賄われる負荷はCPに対応する。
ここで、VO2maxでの負荷はCP とは異なることに注意。エネルギー供給源は有酸素性と無酸素性の和であり、有酸素性の分がCPに相当。

無酸素性エネルギー供給源には、クレアチンリン酸とグリコーゲンがある。可逆なのはクレアチンリン酸のみであり、これは人による差は小さいとのこと。すなわち、ある時間内にいかにグリコーゲンを使って乳酸を出せるかの指標がW'になる。また、W'をどれだけ落とさずに持続できるかがグリコーゲン備蓄量であり、持久力になる。
このような背景を知ると、持久力(Dulability)をW'や維持パワーの低下で評価する方法[1][2][3]は、とても素直で順当に見える。
背景を知らずに指標だけ使っているものだから、酸素借という生理的な測定値と結びつけた理解が後付けになった。

2.生成した乳酸は有酸素性エネルギー供給源となるが、その行方はあまり触れられていない。酸化反応が律速になるとしても、脂肪より乳酸の方が代謝しやすそうなので、実質の有酸素性運動能力(CP)は増加するのではないか。脂肪の備蓄量は大きいので、その助けにはならなさそう。

3.運動後無負荷での酸素消費量の増加(EPOC)は、クレアチンリン酸やグリコーゲンの再合成に使われるとのこと。強い人もグリコーゲンは確実に減るから、グリコーゲンの再合成の速さが持久力に効きそう。脚を削っても、少し休んで再合成できたら強い。


[1] Dynamics of the power-duration relationship during prolonged endurance exercise and influence of carbohydrate ingestion
[2] The Science of Durability: Are You Strong Where it Matters?
[3] 仕事した後のMMP
2023.02.25 Sat l つれづれ l COM(0) TB(0) l top ▲
1日4分 世界標準の科学的トレーニング 今日から始める「タバタトレーニング」 を読んだ。

田畑先生によるタバタトレーニングの解説書でありながら、
1.タバタトレーニングの方法
2.身体とトレーニングの基礎(定量化)
3.トレーニングの組立(原理、原則、要素)
4.分子生物学から見たトレーニング効果
の構成で、後半はトレーニングの総まとめとしてとても良かった。これ一冊で完結。
原理原則を抑えておくと軸ができて、新しい手法の是非を考えるのに役立つ。
意識性の原則に言及されていて、トレーニングの目的を明確にして納得してやることが効果を高める。

タバタトレーニングの方法
・Vo2maxの170%負荷20秒+休息10秒を8セット、4分間行う

個人的発見
・タバタトレーニングは、
 有酸素性運動(Vo2が最大に達する)と、
 無酸素性運動(酸素借が最大に達する)の
 両面を最大限刺激するプロトコルである。

・無酸素性運動を続けて、クレアチンリン酸が枯渇し、
 筋肉のPhが下限(人によらない)に達すると運動が停止。
 耐えられる乳酸濃度の上限は筋肉中の緩衝作用に依り、人により固有の値になる。
 
・分子生物学的に、トレーニング効果のうちミトコンドリアの酸化酵素の増加はPGC1αの濃度上昇に関係する。
 この濃度はトレーニング直後には上がらず、徐々に増えて24時間後まで上昇が続く。運動が記憶され適応が進む。



ところで、今までタバタをきちんとやったことがなかった。理論上の効果はよく理解できたので、長尾台の上りの実走でやってみた。

430Wくらいでつっこんだら3回途中で疲労困憊に達してしまった。2セット目も2回目には350Wくらいに低下し20秒も持たなくなった。

良くなかったのは、
 負荷が高すぎた
 一部ダンシングで安定しなかった
 加速に合わせた変速がうまくできていない

やり方を確立するまで慣れる必要がありそう。
2023.02.19 Sun l 本・論文 l COM(0) TB(0) l top ▲